とある町の小さな税理士事務所

難しい税金の話をシンプルに

代金支払い時の手数料

インボイス制度開始まで10日を切りましたね。

 

今回は、代金支払い時の手数料とインボイスについてお話ししたいと思います。

 

代金支払い時の銀行手数料は、民法上は買い手が負担するとされています。

銀行支払い時の手数料の適格請求書は銀行が発行します。

この二点が大前提です。

 

しかし、売掛金の入金時に、実際の売掛金から銀行手数料を差し引いて入金されるケースがあります。銀行手数料を売り手側が負担するケースです。

その場合、売り手側はその手数料を「支払手数料」「売上値引」のどちらかで仕訳処理すると思います。

 

普通預金 9,670円  /売掛金 10,000

支払手数料 330円  

or

普通預金 9,670円  /売掛金 10,000

売上値引 330円  

 

 

今後インボイス制度が始まるとその手数料部分に適格請求書が絡んできます。

インボイス制度スタート後は、原則として適格請求書がないと仕入税額控除が認められません。

大前提にも記載した通り、銀行手数料のインボイスを発行するのは銀行です。発行の相手先は買い手側です。ですのでこのままですと売り手側はその手数料部分について仕入税額控除ができません。

 

では仕入税額控除をするにはどうしたらいいでしょうか。

 

<ケース1> 支払手数料で処理する場合

売り手側が、

①買い手から「銀行が発行した適格請求書」と「立替金精算書」と受け取る 

②売り手が買い手に対して仕入明細書(適格請求書の記載事項を満たしたものに限ります)を交付する 

の2点があります。

 

この2点のどちらかを満たせば、売り手側で差し引かれた銀行手数料について仕入税額控除できます。

 

 

<ケース2>売上げ値引きで処理する場合

原則的には「適格返還請求書」を売り手が買い手に発行します。

ただし令和5年度の税制改正にて、少額な返還インボイスの交付義務が免除されることとなりました。

少額というのは1万円未満のことです。

銀行手数料が1万円以上になることはないので、この規定が適用され適格返還請求書を発行しなくても、仕入税額控除が可能になります。

 

 

<ケース1><ケース2>を鑑みた場合、<ケース2>の売上げ値引きで処理するのが妥当かと思います。

そもそも、買い手が負担するべき銀行手数料を売り手に負担させる慣習がなくなればよいのに…と思ったりします。

 

 

インボイス制度には細かな論点が非常に多いです。

その辺りはまたいつか。

 

インボイスは海外取引にも影響があるか

令和5年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されます。

 

今回は国内取引ではなく、海外取引についてシンプルにご説明します。

※そもそも海外取引といっても様々な取引があります。

 その中でも今回は、『輸出入取引』に限定して記載します。

※文中に「消法」とあるのは「消費税法」の略称です。

 

  • 輸出取引

輸出免税取引(消法第七条)に該当する場合は、適格請求書の発行義務はありません。(消法第五十七条の四)

 

※輸出免税取引(消法第七条)とは…

(1)国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け

(2)国内と国外との間の通信または郵便もしくは信書便

(3)非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け

(4)非居住者に対する役務の提供

ただし、非居住者に対する役務の提供であっても、免税とされる輸出取引にはならず、消費税が課される場合があります。

 

 

  • 輸入取引

その取引が国外取引に該当する場合は、適格請求書である必要はありません

 

国外取引は、そもそも消費税制度の対象外となります。

その取引が国内取引か国外取引かの判定は非常に難しいので、

個別に専門家にご相談いただいたほうが良いと思います。

 

なお、商品を輸入する場合は、税関等に消費税を納税することがあると思います。

その場合、輸入許可通知書が適格請求書と同様の効力を生じ、仕入税額控除ができます。

 

 

海外取引は、内外判定(その取引が国内か国外か)、輸出免税判定(その取引が輸出免税に該当するかどうか)などの判定が非常に難しいです。

その辺りは、またいつか。

令和6年度税制改正要望がでました

少し前に令和6年度の税制改正要望が出ました。

これを元に12月に税制改正大綱が作成されます。

 

さら~とみてみたのですが、

生命保険料控除制度の拡充(所得税

死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ(相続税

三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し(法人税

賃上げ促進税制の拡充及び延長(所得税法人税

法人版及び個人版事業承継税制の見直し及び延長(相続税法人税

とかが身近ですかね。

 

生命保険料控除制度の拡充(所得税)は、扶養しているこどもの有無で上限が変わるという内容。

所得税はどんどん煩雑になっていきますね。。。

 

死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げは、

現行 法定相続人数×500万円 

要望 法定相続人×500蔓延+「配偶者及び未成年の被扶養法定相続人数×500万円」

という内容。

生命保険金は受取人固有の財産ですし、遺産分割対象からも外れます。

納税資金の確保としてもとても有効なので、もし改正になったらぜひご活用いただきたいなと思ったりします。

 

要望なので大綱にのるかどうかは12月になってみないとわかりません。

なんとなくの方向性はわかるので一読しても良いかもしれませんね。

www.mof.go.jp